仮想特定調停 PART1 多重債務になる

今までご説明した特定調停の概要や手続き手順等を踏まえて、ここでは具体的なケーススタディ、仮のお話として、架空の人物である借金(カリガネ)さんの多重債務状態から特定調停の申し立て、調停完了までのケースをご紹介します。

 

なお、ここで挙げる具体例は、架空の人物、ケースであり、あくまでも特定調停を分かりやすく解説するためのフィクションですので、その点ご留意ください。

 

■多重債務で借金スパイラル

 

「まずいな。これは非常にまずい……。毎月毎月返済を重ねても、利息分位しか返せてない……。しかも借りては返しの繰り返し、翌月の返済のためにまた借金をしてしまうという堂々巡りだ……。まずいな、どうしよう……」

 

そうです。このケーススタディの主人公カリガネさん(27歳)は現在、多額の債務を抱えています。金額は4社の消費者金融会社から総額200万円近くになります。毎月の返済額は10万円を超え、ある消費者金融会社への返済のために他の消費者金融会社から借金をして凌ぐという、借金スパイラルへと陥ってしまっています。いわゆる多重債務状態。なぜ、このような状態になってしまったのでしょうか?

 

 

■最初は軽いつもりだったのに

 

大学入学とともに地方から上京したカリガネさん。熾烈な就職活動を経て、何とか中堅企業へ入社しましたが、不況により会社の業績は右肩下がり、人員削減で増えるに任せる社員1人当たりの仕事量。終わることのない過酷な労働に嫌気がさし、入社3年を経て退職することにしました。初めは「まあ1社目を辞めてもまだ20代の中頃、これは想定内だし、少しのんびりとリフレッシュをして次の会社を探そうっと」、退職当初のカリガネさん。第二新卒として中途入社もまだ余裕だろうと安易にタカを括っておりました。

 

ある程度の貯金もあったので、3カ月程はゆっくりと身体と心を癒し、その後、再就職の活動を開始しました。が、厳しい状況が果てることなく続く近年の日本経済。なかなか再就職先は見つかりませんでした。一旦、正社員での採用を諦め、契約社員の求人への応募を重ね、何とかある住宅メーカーに契約社員として採用され、働き始めることが出来ました。しかし、契約という雇用形態。1社で長く続けられることは難しく、何社かを経て今の会社に至ります。不安定な仕事が長期化するとともに経済的にも不安定な状態が長期化に。

 

それまで勤めていた会社から契約を打ち切られたある月、携帯電話の支払い期限が迫るも所持金に余裕がありませんでした。

 

「こんなに支払いあるのか! 確かに先月使い過ぎたかもなぁ。今月は余裕もないし、生活のためだ、キャッシングもやむを得ないか……」

 

 

大手の会社なら大丈夫かと考え、カリガネさん。A社という消費者金融会社から20万円をキャッシング。後から振り返れば、ここが地獄の一丁目。これまで借金とは無縁だったカリガネさんは審査も簡単に通り、純然とした借金なのですが、あまりに簡単に20万円を手に入れることに驚きを覚えるとともに、「借金をする」という行為に対する心理的障壁は随分と下がってしまいました。

 

その後も、不安定な仕事を続けながら、生活費はもとより時々遊興費という名目でもキャッシングを重ねて、今や消費者金融会社4社から総額200万円あまりという、どこから見ても立派な多重債務者になってしまいました。